フードスタンド製作物語(後編)
ストリートテーブのフードスタンドは東西に4つずつ。2020年の年の瀬、時間がないなか数々の制約を乗り越えて、8組のチームが個性あふれる設計をしてくれました。
設計チームに、「参加をご検討いただけませんか」というお願い文書を送ったのが11月の初旬でしたから、本当に怒濤のようなスケジュールのなか、完成にこぎつけて頂きました。
そんなタイトすぎるスケジュールなのに、考えてみると参加をお断りされたケースは(ほぼ)ありませんでした。三ノ宮の駅前に市民参加型のプレイスメイキングをめざしたことに共感し、無理を乗り越えて下さったのだと思います。改めて設計チームのみなさまに感謝申しあげます。
東側の4台を紹介した前回に引き続き、今回は西側の4台のフードスタンドを北側から順番に紹介したいと思います!
後半のひとつめは、JR三ノ宮駅の中央改札口直結のこのスタンドから。
製作は高橋チーム。COL.architectsの高橋渓さんが設計し、アートワークを含めた製作を松本賢さん、下出健一さん、黒川慎平さんが支えてくれました。充分に練ったプランをもとに現場では一気に組み上げる。そのスピード感も圧巻のチームです。
東側の北から3つめに建つ楠目チームのスタンドと同様、基本的な部材をシンプルに組み合わせながら、カウンターの中にたつ人を引き立たせるステージのようなたたずまいがキレイです。
このスタンドが人目をひきつける理由のひとつが、このアートワーク。躍動的なカラーリングは、角材を並べてグラフィティのようにスプレーで彩られたもの。その角材の配列をランダムに変えながら透かして組み合わせていくことで、この個性的なたたずまいが生まれました。ストリートテーブルで最もカラフルなこのスタンドをぜひ堪能してください。
次に、三角屋根が魅力のこのスタンドへ。
製作はカモメ・ラボの今村健人さんお一人。8チームのなかで唯一、一人だけで設計から製作までやりきりました!
もちろん大変だったと思いますが、普段からハードだけでなく、駅弁型屋台を開発してワークショップやマルシェを開催したり、時には自ら屋台で焼き鳥を焼いたりする。そんな今ちゃんならではの、遊びゴコロと実用性の融合が魅力です。
このスタンドの特徴は、3つに分けたパーツから成り立っているところ、販売と飲食とカウンターの3つの要素が、別々に作られ、現場で統合されました。今使われているスタンドを見ても、機能的にできていることに驚かされますが、この発想の原点は写真の工房に。
実は、これ以上大きくパーツを作ってしまうと、カモメ・ラボの狭い入口からは搬出できないため、やむなく別々のパーツで作ることにしたのがきっかけなんだとか。その制約がこの機能美に転換するのだから、神業です。
ちなみに会場内にときどき登場するこの移動式スタンドは、大阪梅田のウメキタ二期の暫定利用プロジェクト「ウメキタベース」のために、今村さんがつくってくれたもの。スタイルは違えども、やっぱり遊びゴコロと実用性がしっかり融合しています。
3つめは、幾何学的なフォルムが気になるこのスタンド。
製作は、神戸芸術工科大学チーム。喜多川颯馬さん、稲葉里沙さん、黒田茉佑さん、大森そらさんの4人のアイデアを、龍野の建具職人の八木竜二さんがしっかりカタチにし、テントは篠原祥二さんが貼ってくれました。計画段階から学生チームの想いをしっかり受けとめた監督役の合田昌宏さんの支えも、なくてはならないものでした。
このスタンドのコンセプトであり、最大の特徴は、、、。
なんとこのスタンド、飛び出ているところがパタンパタンとどんどん収納できて、最終的に2枚の板にまで収納できてしまうのです。はじめにそのコンセプトを聞いたときには、実現が難しいものに思えましたが、前出の建具職人さんが学生チームと相談を重ね、完成にこぎ着けたのです。
重たい板材が、あまりにもきっちりと仕舞い込まれる構造のため、組み立て中は不意に板材の隙間に手を挟み込まれ、何度も擦り傷を作ったそうです(私も手を挟まれました)が、安全面や雨仕舞いも最終的に対応し、とてもユニークなたたずまいが会場で注目を集めています。
神戸のアート&クラフトシーンをひっぱる神戸芸術工科大学。クリエイティブマインドあふれる学生さんたちの作品は必見です!
そして最後に、焼き杉が味わい深いこのスタンド。
製作は岩ちゃんチーム。ストリートテーブル事務局の岩田晶子さんが設計し、中原工務店の中原誠一さんと水嶋智さんがカタチにして搬入してくれました。
このスタンドの見どころは妙に行き届いた実用性。ぱたぱた仕舞っていくと、(ほぼ)完全な防水機能をもっています。しかも仕舞った状態で調理器具を片づけるスペースが整っていたり、看板設置場所の背後には揚げ物のためのフライヤーが仕込まれていたりと、アウトドアで飲食をサービスするための知恵が妙につまっています。
東遊園地やウメキタベースなど数々のプレイスメイキングの現場で、設計を担当してきたのが岩田晶子さん。酷暑から極寒、梅雨から台風まで、ストリートテーブルの事務局が経験してきた様々な状況を踏まえ、知恵を込めて設計したのがこのスタンドなのです。
事務局の汗から生まれたいぶし銀の魅力(?)に、迫ってみてください。
以上、今回は後編としてストリートテーブル会場のフードスタンドのうち、西側の4軒の製作物語を書き下ろしました。
8軒のスタンド、8つのチーム、8つの物語。ストリートテーブルでは、フードスタンドのそれぞれの違いを、ぜひお楽しみ下さい。
文章:村上豪英